京都ふじわらFP事務所

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テクニカル分析に意味はあるのか?バートン・マルキール著『ウォール街のランダム・ウォーカー』より①

皆さま、ご安全にお過ごしでしょうか!

バートン・マルキールの『ウォール街のランダム・ウォーカー』は長期投資を旨とするインデックス投資家のバイブルといっても過言でない名著で、なんとなくいろんなところで引用されるので読んだつもりになっていましたが、このたびやっと完読しました。

なにしろ、大著なので内容豊富です。そこで、今回の読書感想文は何回かに分けてお届けしましょう。

著者はこんな人

著者のバートン・マルキールは、プリンストン大学の経済学博士で、同大学経済学部長、大統領経済諮問委員会委員、エール大学ビジネス・スクール学部長、アメリカン証券取引所理事などを歴任した大物です。

世界的な投信会社バンガード・グループなどの社外重役としても活躍してますね。

現在、プリンストン大学名誉教授、ウェルスフロント・インクチーフ・インベストメント・オフィサー、リバランス社投資アドバイザーなどの肩書をお持ちのようです。

『ウォール街のランダム・ウォーカー』の初版を1973年に出版し、最新版で13版(5/26発売開始!)まで改訂を重ねており、定番の名著となっています。

本書の構成

第1部 株式と価値
第1章 株式投資の二大流派
第2章 市場の狂気
第3章 1960年代から90年代にかけてのバブル
第4章 21世紀は巨大なバブルで始まった

第2部 プロの投資家の成績表
第5章 株価分析の二つの手法
第6章 テクニカル戦略は儲かるか
第7章 ファンダメンタル主義者のお手並み拝見

第3部 新しい投資テクノロジー
第8章 新しいジョギング・シューズ――現代ポートフォリオ理論
第9章 リスクをとってリターンを高める
第10章 行動ファイナンス学派の新たな挑戦
第11章 「スマート・ベータ」と「リスク・パリティー」--新しいポートフォリオ構築方法

第4部 ウォール街の歩き方の手引
第12章 財産の健康管理のための10カ条
第13章 インフレと金融資産のリターン
第14章 投資家のライフサイクルと投資戦略
第15章 ウォール街に打ち勝つための三つのアプローチ

本書のポイント

今回はテーマを絞って、「テクニカル分析に意味はあるのか?」というポイントについて紹介しましょう。

株価の動き方は短期的には「ランダムウォーク」する、つまりアトランダムに上下するので、予想することは誰にもできないという不都合な真実について触れた部分です。

マルキール教授はこう言います。

「過去の株価の動きがどうあれ、明日の株価の上昇下降は五分五分でしかない。株価が次にどう動くかということは、コイン投げと同じで、誰にも予測できないのである。」

ランダムに行ったコイン投げの結果をグラフにすれば、われわれがよく目にするテクニカル分析の意味ありげな典型的なチャートパターンができあがるという実験結果を示します。

つまり、短期的には株価の動きには規則性はなくて、完全に偶然の積み重ねでしかないというのが科学的な結論ということになります。

また、

「テクニカル戦略の発想は概して面白いし、しばしば気休めにもなる。しかし、実質的な価値は全くない」

「テクニカル分析を使って相場変動のタイミングを当てるアプローチは、特に危険である」

とも述べています。

詳細はぜひ本書を読んで確認してほしいと思いますが、いわゆる「チャート分析」「テクニカル分析」に合理的な意味はないことを結論付けています。

言ってみれば、夜空の星の並び方を動物の姿になぞらえて○○座と命名するのに近い見立てにすぎないという事ですね。人間はこういうのが好きですからね。

もちろん、これは短期的なスコープでの話で、長期的な視点で考えれば、統計学でいうところの「平均回帰」とか「大数の法則」といった別の要因が働くので、一定のラインに収束することは期待できます。これについてはいずれ改めて紹介しましょう。

つまり、タイミングを図って株の売買を行っても勝つときは勝つし、負けるときは負けるし、勝ち続けることはできない、なぜなら原理的に運任せだからということになります。

マルキール教授は、「バイ・アンド・ホールド戦略」は「テクニカル戦略」に勝ると主張します。

実際、個人的に実践している資産運用の実感としても頷けるところで、個別株を短期的に見計らって売買したところで、勝つときもあるけど、いい気になって続けていると負け始めて、結局トントンという、ありがちな話になります。

ただ、短期的な「テクニカル分析」が全く機能しないかといえば、実際に取引するトレーダーたちがその意義を信じて行動しているうちは、それなりのトレンドを生じるので心理的な要因で機能することはあると思います。

「予言の自己成就」的な現象として「テクニカル分析」の意義は存在すると思います。話が行動ファイナンスの領域に入ってしまいますが、人間の経済活動は心理的な要因で動く部分が大きいからですね。

昔々、大学生の頃、経済学は専攻していないにもかかわらず、心理学に基づかない経済学なんてありえない、バカバカしいと管を巻いていたものですが、その当時、海の向こうではちゃんと心理学的な経済学アプローチである行動経済学が台頭していたのでした。そのことを知ったのはごく最近のことですけど。

本日の結論

ということで、「テクニカル分析」には原則として意味は無いというのが結論でした。

例外的な事象も存在するとは思いますが、長期的な資産形成において、覚えておいて損はない基礎知識だと思います。

オススメ度合い ★★★

間違いなく必読書です。資産運用をお考えの方、実行中の方で未読の方は必ず読んでおいてください。

来年から「新しいNISA」を利用しようとする方も必読です。

最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは今日はこのくらいで。本日もご安全に。

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