(A)共済年金が厚生年金に一元化された際に、旧三階部分が「退職等年金給付」に衣替えしたものです。旧三階部分に比べると金額的には減りました。ただし「ねんきん定期便」には載っていないので注意してください。
大幅に改訂しました【最終更新 2023/3/24】
皆さま、ご安全にお過ごしでしょうか!
国家公務員のかたの年金制度は被用者年金の一元化によって、2階部分が厚生年金に一体化しましたが、
- 職域部分(旧3階部分)はどうなったのかな?完全に廃止されたのかな?
- 「ねんきん定期便」には何も書いてないけど、本当にもらえるのかな?
と疑問を持たれる方もあるのではないでしょうか。
国家公務員のかたでも、こうした年金制度改正については職場であまり積極的にアナウンスされないのが一般的なので、ご存知ない方が多いと思います。というか、ほぼみなさん認識がないと思います。
そんな疑問に、簡潔に回答してみましょう。
なお、公的年金制度は複雑怪奇なため、ここではわかりやすさ優先で、大幅に簡略化して説明していますので、ご留意ください。
- 被用者年金制度の一元化
- 「退職等年金給付」の種類
- 「経過的職域加算額」とはどう違うのか
- 「賦課方式」から「積立方式」へ
- 「退職等年金給付」はいくらもらえるの?
- 「ねんきん定期便」には載っていません
- 「退職等年金給付」の将来は?
- 本日のまとめ
- 参考
- オススメ記事
被用者年金制度の一元化
平成27年10月に「被用者年金制度の一元化」が行われました。
これにより、従来共済年金にあった職域部分(いわゆる三階部分)が廃止されました。
ところが、年金制度の急激な改悪になるため、激変緩和措置として設けられたのが「退職等年金給付」という新たな三階部分です。
イメージとしては、民間企業の企業年金に相当する内容です。
「退職等年金給付」の種類
「退職等年金給付」には「等」が付いています。
これは次の三種類があるからです。「退職年金」「公務障害年金」「公務遺族年金」の3つです。
国家公務員ではないのですが、日本私立学校振興・共済事業団の私学共済年金も同様の制度設計になっているので、私学の教職員の方も参考になると思います。
私学教職員年金の場合は、「退職年金」「職務障害年金」「職務遺族年金」の三種類になり、名称が少し異なります。
「経過的職域加算額」とはどう違うのか
被用者年金制度の一元化が行われたのが平成27年10月なので、それ以前の期間については、まさに経過的措置として、共済年金の「経過的職域加算額」が支給されます。
これは従来の共済年金です。
被用者年金制度の一元化以前の部分は「経過的職域加算額」、それ以降の部分は「退職等年金給付」と呼ばれるわけです。
混同しないようにしましょう。
「賦課方式」から「積立方式」へ
公的年金といえば現役世代が年金受給者の給付を支える「賦課方式」のイメージがあると思いますが、「退職等年金給付」は「積立方式」を採用しています。
上にも書いたように、民間の企業年金と同様のイメージですね。
「退職等年金給付」はいくらもらえるの?
ここでは話を単純化するために、「退職年金」に限って、簡潔に説明しましょう。
まず、「退職年金」は「有期年金」と「終身年金」に分かれています。
「有期年金」は原則20年間支給されます。「終身年金」はもちろん生涯受給できます。
具体的な金額規模が気になるところですが、KKR(国家公務員共済組合連合会)の財政再計算関連資料のモデルケースで、以下のような金額になります。
平均標準報酬月額40.5万円、組合員期間40年、受給開始65歳、有期退職年金受給期間20年で、以下の通りの試算です。
- 終身退職年金 月額7,466円
- 有期退職年金 月額8,541円
ただしこれは新3階制度のもとで40年間掛金を積み立てた仮定での金額なので、現在すでにシニア層に達している方は新3階制度への移行後の積立金は少ないので、受給額はもっと少なくなります。(お小遣いレベルの金額でしょう)
その場合は、ほぼ「ねんきん定期便」に記載されている「経過的職域加算額」を参照すれば足ります。
あまり大きな金額ではないのですが、長期間にわたって受給できるので、累積すると数百万円に達する規模になる人もあるでしょう。
なので、上記の試算は若い世代がこれから新3階部分の掛金を積み立てた場合に、どうなるかというおおかまなイメージです。
ただし、「有期年金」部分は20年間の限定なので、終身で受け取れるものとしてキャッシュフローを考えると誤謬が生じます。(あまり大きな金額にはなりませんが)
従来の共済年金の3階建ての部分は終身で受給できたわけなので、新制度で「有期年金」が20年間で打ち切りになる分、年金受給額は減っているわけですね。
さらに、年金額は確定ではなく、退職後も運用が続くため毎年年金額が見直され、金額が変動することも大きな特徴です。
「ねんきん定期便」には載っていません
ただし、「退職等年金給付」については、「ねんきん定期便」には載っていません。
なので、KKRに年金試算を依頼した場合の試算結果にも掲載されていません。
「経過的職域加算額」は載っていますが、平成27年10月以降の「退職等年金給付」の表示がありません。
これは新3階部分の「退職等年金給付」が「公務員版企業年金」と捉えられているため、ワンストップサービスの対象となっていないからです。
「退職等年金給付」については、65歳になったときにKKRにから具体的な金額の通知が行われることになっています。
つまり、国家公務員の方が将来受給できる年金総額は、65歳にならないと確定せず(まあ当たり前ですが)、見込額の試算はできるものの、「退職等年金給付」の見込額は試算できないということです。
つまり国家公務員の方は、「ねんきん定期便」で通知された見込額以上の年金額を受給できるわけです。(民間企業と同じですけどね)
そして、「退職等年金給付」のための積立額については、「ねんきん定期便」とは別に、KKRから「払込実績通知書」が毎年各個人に通知されています。そこに積立額が記載されています。
将来受給できる「退職等年金給付」の額は65歳にならないと確定しないものの、かなりの概算ですが、おおよそどれくらいになりそうかという目安にはなります。
また、基礎年金や厚生年金のように繰り上げ、繰り下げの制度はなく、65歳から受給開始になります。
「退職等年金給付」は、公的年金同様に、繰り上げ、繰り下げも可能です。
「退職等年金給付」の将来は?
以下は完全に私見です。
実は、以上のような経緯を経て新三階部分として設定された「退職等年金給付」は激変緩和措置としての政策的意味合いが大きいでしょうから、今の制度のままで継続するのかどうかは疑問に感じていました。
将来的に減額とか廃止されるのではと思っていたのですが、今回調べたところでは、その可能性も確かにあるものの、KKRで通常通りの年金運用ができれば存続可能ではないかと少し安心しました。みなさんは、いかがでしょうか。
本日のまとめ
重要なことなので、本日のまとめとして、同じことを再掲しておきます。
(A)共済年金が厚生年金に一元化された際に、旧三階部分が「退職等年金給付」に衣替えしたものです。旧三階部分に比べると金額的には減りました。ただし「ねんきん定期便」には載っていないので注意してください。
「退職等年金給付」の制度は始まってまだ浅いので、現職国家公務員のみなさんの間にも浸透していない制度だと思います。
大きな金額ではないものの、「ねんきん定期便」の見込額以外に、追加の企業年金的なものがあるくらいにイメージしておけばいいと思います。
人生100年の生涯設計をFPに依頼する場合には、そのことも加味してキャッシュ・フローを検討するといいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは今日はこのくらいで。本日もご安全に。
参考
本記事の調査にあたっては、KKRの年金相談ダイヤルのお世話になりました。
www.kkr.or.jp
また以下のとおり、私学共済の資料の説明が非常にわかりやすく書かれています。
Request Rejected
こちらの長沼明先生の解説が非常に有益です。
www.shaho-net.co.jp