京都ふじわらFP事務所

お金と人生をデザインする。京都の独立系ファイナンシャルプランナーです。

【新しいNISAについて私が知っている二、三の事柄】新しいNISAの「成長投資枠」は、個別株を買わないといけないの?「成長投資枠」の名称になにか特別の意味はあるの?


皆さま、ご安全にお過ごしでしょうか!独立系FPの藤原@CFPです。

来年から始まる「新しいNISA」ですが、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の二つの勘定に別れていて、これは二階建てのイメージではなく、二つの勘定が並列しているのだということは、以前に記事にしたところです。
fp-f.net

「つみたて投資枠」はこれまでのつみたてNISAを、「成長投資枠」はこれまでの一般NISAを引き継ぐものだと説明されますが、「成長投資枠」については、なにか個別株しか買えないとか、買うべきだとか、この枠を使うと資産が大きく成長するのかな、などと考えてしまいませんか?名称がそんな印象を醸し出しますよね。

でも答えは、そんなことはありません。

「成長投資枠」などと名乗っていますが、実はその名前に特別な意味はないのです。
この枠で買える商品が「つみたて投資枠」で買える商品をを含んで、それ以外の上場株式なども幅広く買えるということで制度上の違いはあるのですが、だからといって買うこともできるというだけで、「つみたて投資枠」と違う商品を買いなさいとか、買ってほしいなあという主旨での命名ではないのだそうです。(少なくとも公式には)

これも幻の新NISA構想のイメージが尾を引いているかもしれません。

また、制度設計の際に、与党税調メンバーや関連団体の含意としては、個別株をもっと買ってほしいなあ、特に日本株を買ってほしいなあ、個別株などの回転売買で手数料を稼ぎたいなあ(金融機関の心の声)という願いは込められたかもしれませんが、最終的な公式見解としては、「成長投資枠」の名称に特段の意味は込めていないということだそうです。吃驚ですね!

おなじみの経済評論家 山崎元氏は、以下の通り見解を述べています。

 「新NISAの「成長投資枠」は、個別株投資が個人の間でも活発に行われてほしいという建前の下に、金融機関に収益獲得の余地を残すために設けた、いわば妥協の産物だ。」

(出所)ダイヤモンドオンライン「昭和の香り漂う「回転売買」は新NISAでも生き残るか?」
diamond.jp

また、日経新聞の山本由里氏は以下のように述べています。「漠としつつも価値判断のニュアンスを帯びた名称」と表現して、違和感を表明しています。

「多様なニーズに応える幅広い投資対象、という意味では現行の「一般NISA」の呼び名の方が妥当ではある。それが来年から「成長投資」という、漠としつつも価値判断のニュアンスを帯びた名称に変わったことで、かえって対象商品のイメージが分かりにくくなった面もある。」

(出所)日経新聞 新NISA、「成長投資枠」の考え方 知っ得・お金のトリセツ(129)
www.nikkei.com

つづけて、

「新NISAは、金利ゼロの現預金に過半が眠る2000兆円超の家計金融資産を投資にいざなう先兵だ。企業が潤沢な資金を成長投資へと回し、一段の利益成長を実現し、株式市場がそれを評価して初めて「成長と分配の好循環」が回り始める――。成長投資枠とは、この政策目標ありきの呼び名だと割り切るとスッキリする。」

(出所)同上

と明言します。まあ、当たり前といえば当たり前の話で、想像通りの結論ですね。

ちなみに、「成長投資枠」は根拠法令である租税特別措置法などでは単に「特定非課税管理勘定」と呼ばれています。法令にも特に名称の意図や主旨は規定されていないわけです。(同様に「つみたて投資枠」は「特定累積投資勘定」と表現されています。)

「成長投資枠」という意味ありげな怪しげな名称にミスリード(幻惑)されないように、冷静な計画と利用を心がけたいものです。

最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは今日はこのくらいで。本日もご安全に。

参考

fp-f.net