京都ふじわらFP事務所

お金と人生をデザインする。京都の独立系ファイナンシャルプランナーです。

定年延長はいいけど、人間の認知機能は確実に低下します。そこにリスクはないでしょうか?

皆さま、ご安全にお過ごしでしょうか!独立系FPの藤原@CFPです。

定年年齢の繰り下げは国の方針で、高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会確保、つまり定年延長が努力義務となっていますが、実はここには注意点があります。

それは、人間の認知機能は加齢により着実に衰えるということです。

少し古いですが、以下のような調査もあります。
www.bm-sms.co.jp

過去の記事にも書いたように、特に数的処理能力は相当早い時期から低下を始めます。言語能力は最期まで機能を維持できるようですが、人間の認知機能は意外と早くピークを打って、反転降下を始めることが科学的にわかっています。

しかも、高齢者は認知能力の低下を客観的に自認することができないため、60歳代以降では、実際の能力に対して、自信過剰状態が発生します。
fp-f.net

すると、何が起こるでしょうか?

定年延長により、60歳代、70歳代の勤労者が増えていくわけですが、職務内容によっては、計算能力の低下や注意力の低下による、仕事上のミスの発生が増えることが予想されます。しかも、そうした年代の勤労者は自信過剰状態になっているため、ミスが素直に認められません。おそらく、現場レベルではすでに一定の問題が生じていると思われますし、個人的にも、実際に発生している具体的な事例を仄聞します。

この対応は、職場の管理職が業務体制を整備して、チェック体制の見直しなどでミスをカバーするのが筋なのですが、リソース的にその余裕のない職場においては、いろいろな問題を生じさせる可能性があります。ミスが発生して、そのまま見逃されるといった事象が起こるはずです。それが、致命的なミスでなければいいのですが。。。

しかも、そうしたトラブルについて、高齢勤労者個人に責任を転嫁するようなことも危惧されます。今後問題化することが容易に予想されます。実際にもう発生しているかもしれません。

本来は、業務上の人的ミスは必ず発生するという前提で、リスク管理として職場の体制と仕組みのなかで解消すべき問題ですが、管理職や会社が責任を回避するために、個人に責任を押し付けるようなことが起こるかもしれません。あってはならないことですが、いかにもありそうなことです。

そんな場合は、労働組合が勤労者の助けになるかもしれませんし、労働局、労基署なども相談に乗ってくれるでしょう。さらに今後は、高齢勤労者のための賠償責任保険なども誕生するかもしれません。医療従事者、士業、公務員の一部など、職種によってはすでに存在しますが、それ以外の職種においても必要性が増す可能性があります。

このことは、労使双方がリアルに認識しておくべき問題だと思います。肝心なのは、労使ともに加齢という現実を科学的に直視するということです。加齢による認知機能の低下は、人が制度や仕組みを遵守すればいいのだという建前の話(精神論?)では、解決できない問題だからです。

最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは今日はこのくらいで。本日もご安全に。